2021 OHArchitecture

考えたこと

2023.02.06

見出されるかたち -淡路島3部作-

敷地は淡路島の夢舞台。神戸三宮からも車で30分とアクセスが良く、山と海が広がる風光明媚な場所ですが、ここは昔、関西国際空港の埋め立て地用の土取場になっており、一度自然が失われた場所でもあります。「増築工場」、「BBQテラス」、「温浴施設」と夢舞台で3つのプロジェクトが続き、このような場所・風土において、建築はどのように立つべきだろうか。考えた事をここにまとめてみることにしました。

淡路夢舞台の整備計画は、カナダにある採掘の終わった採石場跡を整備して年間100万人が訪れる庭園になったブッチャートガーデンに倣って国と兵庫県が進めた事業であり、「失われた自然の回復」を理念に安藤忠雄さんが作り上げた建築です。ここで注目すべきは、安藤さんは、失われた自然の回復を実現するために、強い幾何学の形を与えている点です。自然に迎合して馴染むような形はせず、自然と対峙することで相対的に自然を感じる場所にしています。20年たった今、再訪してみると、コンクリートの壁に蔦が絡まり、自然の回復を示唆する風景が広がっていました。(※figure01)

最初に設計した「増築工場」はギザギザのファサードが特徴です。はっきり言って、既存の本社・工場とのつながりは無いに等しいです。それよりもこの夢舞台という場所に対しての立ち方を考えました。建物の規模は大型攪拌機を組立てることから自ずと決まっていました。48m×27m×H20mのボリュームはかなり暴力的になり、いかに風景に溶け込みつつ、企業の勢いを示す存在感を示すことが命題でした。そこで生まれたのがギザギザのプリーツです。プリーツは外部ではSUS445とガルバリウム鋼板を互い違いに貼ることで、見る角度・時間によって異なる外壁になり、内部では、組み立てに必要な、給排水・電気・圧空や空調スペースに利用されています。正面から工場をみると空を映して擬態したように風景に馴染みます。側面のプリーツを正対してみるとSUS445側とガルバリウム鋼板側で映す風景が異なり、グラデーションを生み出し、時間と共にそのグラデーションは反転する特徴的なファサードになりました。(※figure02)

次に設計したのは「BBQテラス」です。この建物は増築工場と道を挟んだ所に建っています。設計時期は同じもの、積極的に関連性を考えて、検討した訳ではありませんでした。シンプルな機能(BBQ+トイレと洗車ができる場所)だったので、屋根と倉庫があれば成立してしまいます。屋根だけで出来るシンプルな建築を考えた時、竪穴式住居のような地面に屋根架構をかけるだけで成立する又首構造のようなものが相応しいと考えました。それは削られた土地に対して、地面との連続性や背景の山並みに対して新たな関係を作れることを期待したからです。そして生まれたのが幾何学の三角形と言う形です。最終的に、機能に合わせてこの三角形を3つ並べ、それぞれが寄り添うことで強度を高め、薄くシンプルな形にすることが出来ました。(※figure03)

次に設計したのは「温浴施設」で、用途は温泉・カフェ・エステ・飲食店・サイクル店の複合施設です。前述の2つのプロジェクトから500m程度離れており視認できる距離にある国営公園内で、長さ350m・幅約30mの細長い敷地ではありながら海に対して開かれた絶景の場所でした。建物を一つにまとめるのではなく、公園に点在する休憩所やパーゴラのように、屋根だけの開かれた空間が望ましいと考え、分棟にしつつ、間にコート(公園)をクラスター状に配置することで、海とコートと建築が一体的に感じられる計画としました。ボリュームを大・中・小の3つの建物規模に整理しつつ、1モジュール6m幅の屋根のある建物にし、小は1つ、中は2つ、大は3つのモジュールの組み合わせからなる建物群にしました。このように同じ形状の分節された屋根が集まることで、統一感のある風景を生み出し、周辺環境に馴染む立ち方としました。(※figure04)

 

3つのプロジェクトに現れる、”ギザギザ”と”反復”はそれを目指して造った訳ではありません。ギザギザは風景において山並みや民家などに呼応し易く、内部空間においては高さや平面に変化を与えることが出来ます。また、それを反復することで変化があるシークエンスに生み出すことが可能になりました。それぞれの場所において、どのような建ち方が相応しいか検討した結果、見出された型と言えると思います。機能が大事で形は表現やエゴのように思われる側面がありますが、形があることで場所は形作られていきます。これからも機能が変わっても成立するような、明確な骨格がある建物を創っていきたいです。(※figure05)

2023.03.08

まちとのかかわり -ホテル3部作-